Copyright © Kobe University
Biosignal Research Center.
All rights reserved.

シグナル機能制御研究部門

English>>

分子薬理研究分野

研究内容

当研究室では、神経系における細胞内情報伝達について研究を行っています。神経における情報伝達系の機能解析およびその異常による神経疾患発症メカニズムの研究を中心に研究を行っています。特にプロテインキナーゼC、低分子量Gタンパク質、活性酸素種、Gタンパク質共役型受容体の神経系における機能を、イメージング技術を駆使して解明しようとしています。つまり、これらの酵素が、細胞外からの刺激に、「いつ」、「どこで」、「どのように」して結合し、「どのような細胞応答」を引き起こすかを、生きた細胞内でこれらの分子を可視化することにより明らかにしようとしています。そのために培養細胞内でのライブイメージングはもとより、様々な遺伝子改変マウスを作製することにより、各分子の役割を時間的・空間的に解析しています。さらに、情報伝達因子の異常による神経疾患(パーキンソン病、小脳脊髄変性症など)や感覚器の異常(難聴、めまいなど)の発症メカニズムを解明することにより、これら疾患の治療薬の開発を目指しています。

我々は人体の様々な組織における細胞機能を遺伝子やタンパク質レベルで解明する事によって、情報伝達機構やタンパク質修飾などと疾患との関係を解明しようとしています。最終的には治療や創薬につながる発見を目指し日々研究をしています。

  1. 神経変性疾患(脊髄小脳変性症、パーキンソン病など)の発症メカニズムにおける細胞内情報伝達機構の異常についての研究
  2. 遺伝子改変マウスを用いた①内耳有毛細胞(聴・平衡覚)の発達及び維持、②脳損傷後の機能回復、③小脳の層構造形成、④皮膚組織(表皮・皮下脂肪層)の構築に関する研究
  3. 生体内における活性酸素の生理的機能解明及び活性酸素関連疾患の新規治療法の開発
  4. タンパク質の翻訳後修飾、特にリン酸化、S-ニトロシル化、S-パルミトイル化を介した細胞内情報伝達機構の解明と疾患への関与の研究
  5. 質量分析法を利用した細胞内情報伝達や疾患に関わるタンパク質同定法の効率化と普遍化に関する研究、および質量分析用語の標準化に関する研究

主なメンバーはスタッフと、医学系研究科(博士・修士課程)からの大学院生と研究生、また神戸大学外からの研究者が境界をこえて、各々の視野から神経細胞内情報伝達の研究を行っています。

細胞情報研究分野

研究内容

当研究室では細胞が生理活性物質、細胞ストレス、栄養変化などのシグナルを受けた後、それらのシグナルがどのようにして細胞内部へ伝達され、細胞の機能を制御しているかという仕組みの解明を行っています。

生物はゲノムの指令に基づいて構築された細胞応答システムであり、生体内で生産される生理活性物質をシグナルとして、また同時に刻々と変動する外界環境の変化に対応して生命機能を維持統御しています。別な表現をすれば、生命活動は自分自身のゲノムに内包された情報による調節と、外界環境からの入力への反応とが並行・協調して営まれています。しかし、この内からと外からの生命機能制御、そしてこの両者の関係には、まだ不明の点が多く残されています。私たちは以下の3テーマでシグナル伝達の仕組みを解析することにより、これまでに知られていなかった多彩な生体機能制御の仕組みを明らかにすることを目指しています。

  1. タンパク質リン酸化酵素PKC、PKBによる細胞機能制御
    PKCやPKBは生理活性物質およびストレスにより異なる分子機構により活性化されます。これら酵素の複雑な活性制御機構と、それぞれの活性型分子の具体的な役割に関する研究を行っています。
  2. タンパク合成・細胞成長を制御するTORシグナル伝達機構
    TORは免疫抑制剤や抗がん剤として注目されるラパマイシンの標的となるタンパク質リン酸化酵素です。TORは栄養状態をはじめ、種々の外的環境の変化に応じてタンパク合成や細胞成長などの機能を制御しており、その制御異常は、がんや2型糖尿病などの多くの疾患と結びつくことが知られています。TORシグナル伝達機構の多様な制御機構および機能について分子レベルでの解析を行っています。
  3. 細胞の栄養感知および応答の分子機構
    アミノ酸や糖などの栄養は細胞が生命機能を維持するための必須な要素です。近年、細胞は栄養状態の変動を多くの分子を駆使して感知し、TORだけでなく様々なシグナリングをコントロールすることで細胞機能の制御を行っていることが明らかとなっています。新しい栄養の感知システムおよび細胞の制御機構の発見と解析を行っています。

生体膜機能研究分野

研究内容

課題1

リン脂質は、細胞膜を介したシグナルの変換に関わる重要な生体分子であり、その代謝不全は数多くの疾病につながります。中でも、がん細胞を特徴づける「無秩序な増殖」と「浸潤・転移」は、いずれも細胞膜を介したシグナル伝達の異常と、大規模な膜の動態変化によってもたらされます。本研究室では、細胞膜を構成するリン脂質を介した、細胞運動とメンブレントラフィックの分子機構を研究しています。特に、これまではその意義が不明であった「生体膜の曲率」という新たなパラメーターに着目し、リン脂質シグナルの異常が引き起こす重篤な疾患の発生機序に迫ろうとしています。また、それらの成果から「細胞膜の形状」を標的とする分子創薬を目指した研究を展開しています。

  1. リン脂質シグナリングによる細胞運動の制御機構
    細胞膜の大規模な形態変化を伴う細胞運動は、がん細胞の浸潤・転移や、免疫細胞のホーミング、炎症反応などに深く関与する重要な生命現象です。本研究室では、細胞膜直下におけるアクチン細胞骨格の重合がもたらす駆動力が、リン脂質を介したシグナル伝達によって細胞運動の方向性と持続性を制御するメカニズムを明らかにしています。
  2. メンブレントラフィックの分子機構
    増殖因子受容体の取り込みと分解を担うメンブレントラフィックの異常は、がん化を決定づける因子として重要です。本研究室では、細胞膜の形状を直接的に制御する機能モジュールを介した、メンブレントラフィックの分子機構を研究しています。最先端のライブイメージング手法を駆使したがん細胞における膜動態観察だけでなく、精製タンパク質と人工膜を用いた再構成系を確立し、生体膜の動態を試験管内で再現することにも成功しています。様々な薬剤を駆使した、メンブレントラフィックの制御技術の確立も精力的に行なっています。

課題2

タンパク質のリン酸化および脱リン酸化という現象に焦点をあてつつ、細胞内シグナル伝達機構の研究を行ってきました。特にタンパク質リン酸化酵素N (PKN) ファミリーの発見以後は、それらの構造・機能に関する研究を通じて、創薬ターゲットしての可能性を探っています。

  1. タンパク質リン酸化酵素の機能解析
    タンパク質リン酸化酵素、中でもPKCやPKNの酵素学的、細胞生物学的、そして遺伝子改変マウスを用いた個体レベルでの機能解析を行っています。細胞運動や細胞死、種々のストレス応答における役割が明らかになってきています。