Copyright © Kobe University
Biosignal Research Center.
All rights reserved.

学術講演会

学術講演会の開催予定

日 時: 平成29年 9月19日(火) 16:00〜17:00
場 所: バイオシグナル総合研究センター 5階 研修室
講 師: 糸数 裕 博士
  オーガスタ大学・ジョージア医科大学

演 題

再生における糖脂質の機能的役割

要 旨

私たちの体の全ての細胞は、脂質膜に囲まれることにより、外部から細胞内を分離し細胞内に必要な内容物を確保し、効率的に生命機能を維持しています。脂質は細胞が生きていくために、必要不可欠な成分です。最近、脂質は単に膜の成分として均一に存在しているのではなく、ガングリオシドをはじめとしたスフィンゴ糖脂質やコレステロールがその主成分となり、細胞特異的・時期特異的な脂質膜マイクロドメイン(脂質ラフト)を形成して、細胞間認識、細胞接着、細胞遊走、シグナル伝達、さまざまな膜タンパク質の活性などを調節している可能性が示唆されてきました。再生医療において、幹細胞の有用性が注目されていますが、神経幹細胞ではGD3ガングリオシドがEGFRシグナルを通して神経幹細胞の自己複製を制御している一方で、GM1ガングリオシドがエピジェネティックな遺伝子調節により神経細胞への分化を促進していることが明らかとなってきました。本セミナーでは、これらの新しい知見を総括し、組織再生に最適な糖脂質環境を用いた再生医学の可能性をデイスカッションします。(PDF)

過去に行われた学術講演会

日 時: 平成29年 5月25日(木) 16:30〜18:00
場 所: バイオシグナル総合研究センター 5階 研修室
講 師: 佐々 彰 博士
  千葉大学大学院理学研究院

演 題

複雑化したDNA損傷に立ち向かうゲノム恒常性維持機構

要 旨

ゲノムDNAには、環境中の化学物質や代謝過程で生じる活性酸素などの外的・内的要因によって絶え間なく損傷が生じています。DNAに形成する損傷は時に複雑な形態を取り、ゲノムの不安定化を引き起こします。その様な損傷に立ち向かうために、細胞は様々なDNA修復機構を幾重にもオーバーラップさせて、ゲノムの恒常性を維持していると考えられます。私達は、複雑化したDNA損傷に対するゲノム恒常性維持機構を明らかにするために、DNA修復酵素によるDNA修復反応の酵素反応速度論的解析と、ヒト細胞内におけるDNA損傷の突然変異誘発能の測定を行ってきました。その結果、本来の役割を越えた多様なDNA修復機構の働きが明らかになってきました。
 本セミナーではその中でも、(1)ゲノムの狭い範囲に複数の損傷が生じる「クラスターDNA損傷」の修復及び突然変異抑制機構、(2)損傷RNA前駆体のDNAへの取り込みが引き起こすゲノム不安定性及びその損傷トレランス(耐性)機構、に関する、最近の研究成果を紹介します。(PDF)


日 時: 平成29年 2月16日(木) 17:00〜18:30
場 所: バイオシグナル総合研究センター 5階 研修室
講 師: 増本 博司 博士
  長崎大学医学部共同利用研究センター・講師

演 題

CRISPR/Transposon gene integration(CRITGI)による染色体への遺伝子導入法の確立

要 旨

生物には特有の優れた細胞機能、代謝経路をもっているが、それら細胞機能モデュールを他の生物種に移植することで新しい融合生物を造り出すことが可能である。これらの融合生物を使い、希少な天然物を安価に大量合成できるという産業面での貢献が期待できる。しかしながら細胞機能モデュールには多数の遺伝子が関与しており、その構成数は数十、百近くにまで達するものもある。そのため融合生物の作製には多数の遺伝子群を簡便に染色体に導入する遺伝子改変技術の確立が必要となる。
 多数の遺伝子を簡便に染色体に組み込む技術として、ゲノム編集技術である CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)を使って出芽酵母染色体上に多数点在する Ty1レトロトランスポゾン領域に遺伝子を導入する技術: CRISPR/Transposon gene integration (CRITGI) を開発した。CRITGI は Ty1 配列と外来遺伝子を持つプラスミド上の Ty1 配列に CRISPR により二重鎖切断を導入し、相同組換え反応を利用して染色体上の Ty1 部位にプラスミドを導入する技術である。直鎖 DNA を使った古典的な形質転換法では一回の形質転換で 1 コピーのプラスミドのみが染色体上に導入できるのに対して、CRITGI は最大 30 コピーのプラスミドを染色体に挿入することができた。また CRITGI を繰り返すことで、挿入部位となる Ty1 配列が染色体内で増加するとともに、挿入プラスミド数も最大 90 コピー近くまで増加させることができた。
 このように CRITGI は多数のプラスミド DNA を出芽酵母の染色体に導入できる。さらには CRISPR の新しい利用法として、多コピーの環状プラスミド DNA を染色体に導入できることを示している。現在、CRITGI を使い出芽酵母内に複数種の遺伝子を導入する技術の開発を行なっている。

 


日 時: 平成29年1月16日(月) 17:00〜18:30
場 所: バイオシグナル総合研究センター 5階 研修室
講 師: 坂本 克彦 博士
  神戸大学大学院農学研究科 昆虫分子機能科学研究分野

演 題

哺乳類の末梢時計と昆虫の日数積算機構

要 旨

ヒトを含むほとんどすべての生物は、概日時計と呼ばれる内因性の時計をもっており、時刻情報のない恒常条件下でも、約1日周期の行動や生理活性のリズムを示す。今回のセミナーでは、演者がこれまでにおこなってきた概日時計に関係する研究から、以下の2つのトピックスを提供したいと考えている。
 Ⅰ.末梢時計について:1990年代までは、哺乳類の日周リズムを制御する概日時計は、脳内にしか存在しないと考えられていた。しかし我々は、時計遺伝子の発現解析から、脳内の中枢時計の振動体と同様の分子機構が末梢組織(心臓、肝臓など)にも存在すること、そして、末梢の概日振動体の発振が脳内時計中枢によって制御されていること、を示唆した (1)。哺乳類概日時計システムの階層構造発見の糸口となった研究について報告する。また、概日時計の時刻同調機構に関与するタンパク質を包括的に検索するためにおこなった、二次元電気泳動を用いたプロテオーム解析についても報告する。
 Ⅱ.日数積算機構ついて:昆虫は、生長に不適な夏や冬の過酷な環境を乗り切るために、季節変化のシグナルとしての「日の長さ」を読み取り、休眠状態のON・OFFを事前にスウィッチする。こうした日長応答現象には、概日システムが関与すると考えられているが、昆虫ではその制御機構の解明が進んでいない。我々は、サクサンという蛾の休眠蛹を用いた研究から、メラトニン合成系とドーパミン合成系が相互に抑制しあうことにより、経験した長日または短日の日数積算が可能であることを示唆した (2)。昆虫の日数積算機構モデルを紹介する。

 (1) Sakamoto et al., Journal of Biological Chemistry, 1998, 273: 27039-42.
 (2) Wang et al., Entomological Science, 2015, 18: 74-84.

 


日 時: 平成28年12月5日(月)15:00~16:30
場 所: バイオシグナル総合研究センター 5階 研修室
講 師: Dr. Thomas A, Kunkel
  Genome Integrity and Structural Biology Laboratory, NIEHS, NIH, U.S.A.

演 題

Studies of nuclear DNA replication fidelity

要 旨

 Coordinated replication of the two DNA strands of the eukaryotic nuclear genome is catalyzed by DNA polymerases a, d and e. These replicases are related, yet they differ in protein partnerships and physical and biochemical properties, including fidelity. This talk will focus on studies of replication fidelity in budding yeast using replicase variants with error signatures that allow the functions of Pols a, d and e in leading and lagging strand replication to be deduced. Emphasis will be on the rates at which errors are generated during replication of undamaged DNA, and the efficiency with which they are corrected by DNA mismatch repair. Despite wide variations in both processes, the replication and mismatch repair machineries operate in a complementary fashion that ultimately achieves highly accurate replication of both DNA strands of the yeast nuclear genome.

 


日 時: 平成28年9月5日(月)15:00~16:00
場 所: バイオシグナル総合研究センター 5階 研修室
講 師: 日下部 将之 博士
  (東北大学大学院農学研究科)

演 題

遺伝子破壊細胞と遺伝学的相補系を用いたヒストンバリアントH2A.Zの機能解析

要 旨

 真核生物のゲノムDNAはクロマチン構造を形成しており、クロマチン構造の動的変換を介してゲノム機能が制御される。近年、コアヒストンに代わってヌクレオソームに導入されるヒストンバリアントが、クロマチン構造変換に重要な寄与をする因子として注目されている。コアヒストンH2Aのバリアントの一つであるH2A.Zは、進化的に高い保存性を持ち、転写活性化、DNA損傷修復、染色体分配など様々なゲノム機能制御に寄与する。さらに近年、H2A.Zの機能異常と細胞がん化との関与も指摘されており、医学的にも興味深い研究対象である。しかし、H2A.Zによるゲノム機能制御の分子基盤は未だ多くの点が不明である。これまでに我々は、ニワトリDT40細胞を用いてテトラサイクリン誘導的H2A.Z欠損(H2A.Z KO)細胞の樹立を行い、H2A.Z KOによって転写活性化・誘導、DNA損傷修復、染色体分配、などの様々なゲノム機能に異常が生じることを観察している。さらに、H2A.Z KO細胞に対して外来性変異H2A.Zを遺伝子導入し、全てのH2A.Zを外来性H2A.Zに置換した安定発現細胞株を樹立・解析する遺伝学的相補実験系を確立した。
 この実験系を用いて、我々はアセチル化修飾を受ける機能領域であるH2A.Z N末端ヒストンテールの解析を行った。まず、非アセチル化型H2A.Zを安定発現する細胞株(KO/5KR-H2A.Z)を樹立し、野生型H2A.Z発現細胞(KO/H2A.Z)との表現型比較を行った。顕微鏡観察を行った結果、両外来性H2A.Zともに染色体分配異常は相補可能であった。次に、転写制御への影響を評価するため、外部刺激に応じて転写が迅速に活性化される転写誘導性遺伝子EGR1に着目し、転写誘導を解析した。この結果、KO/H2A.Zでは転写誘導が起こったが、KO/5KR-H2A.Zでは転写誘導が起こらなかった。さらに、クロマチン免疫沈降(ChIP)解析により、外部刺激時にEGR1遺伝子領域においてH2A.Zアセチル化が亢進することが観察された。これらの結果は、H2A.Zへのアセチル化修飾は、転写誘導に対して特異的な寄与をすることを示している。
 さらに最近、我々は染色体分配において重要なH2A.Zの機能領域を同定するため、がん細胞における変異データベースを用いた探索を行った。興味深いことに、この探索によってがん細胞におけるH2A.Zの点変異(H2A.Z cancer-associated mutation : H2A.Z-CAM)が見出され、H2A.Z-CAMを安定発現する細胞株では染色体分配異常の頻度が増大することが示された。現在、H2A.Z-CAMによる影響を生化学的、細胞生物学的に解析しており、これらについても紹介したい。

 


日 時: 平成28年9月5日(月)16:00~17:00
場 所: バイオシグナル総合研究センター 5階 研修室
講 師: 江成 政人 博士
  (国立がん研究センター研究所 難治進行がん研究分野)

演 題

p53経路破綻に伴うがん悪性化機構の解析

要 旨

 ほとんどのヒトのがんにおいて、p53経路の不活化が起こっており腫瘍ががんであるためにあってはならない経路であると考えられている。p53は細胞内外の発がんストレスに応答してがん抑制に関わる様々な標的遺伝子を調節する転写因子として働く。多くのがん種でp53経路の不活化ががんの浸潤や転移そしてがん治療抵抗性などの悪性化に関与していること、そして、がんとがん間質との相互作用もがん悪性化を助長することが知られており、がん随伴線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast; CAF)でのp53経路の不活化もがん悪性化に寄与していることが示唆されている。私達は、独自に開発した発がんの再構成系を用いてp53経路の不活化によって誘導されるがん悪性化に関わる分子TSPAN2を同定し、TSPAN2がCD44との相互作用を介してがん細胞内の活性酸素種を低下させることでがん悪性化を促進することを見出した(1)。一方、がん周辺部に集積した線維芽細胞のp53経路はがん由来の分泌因子によって不活化され、p53経路の不活化に伴ってCAF様の性質を獲得することがわかった。CAF様の性質を獲得した線維芽細胞はがん細胞との直接的な細胞間接触依存的にがん細胞の浸潤能などの悪性化を助長することも明らかにした。その助長シグナルにはTSPAN12が重要な役割を担っていることも発見した(2)。本セミナーでは、そのことに加えがん治療応用への取り組みについても議論したい。

 (1) Otsubo C. et al., Cell Reports, 2014, Apr 24, 7, 527-538
 (2) Otomo R. et al., PNAS, 2014, Dec 30, 111, 18691-18696

 

日 時: 平成28年7月6日(水)17:00~18:30
場 所: バイオシグナル総合研究センター 5階 研修室

演 題

ベルギー・ルーヴァンカトリック大学からの学生による滞在報告会

内 容

ベルギー・ルーヴァンカトリック大学(Catholic University of Louvain:UCL)は1835 年に再創設以来フランス語で、1930 年以来オランダ語で講義を行ってきました。1968 年にオランダ語部門が分離してルーヴァンにとどまり、フランス語部門がルーヴァンラヌーヴに移設されました(医学部及び附属病院はブリュッセルに設置)。大学には医学歯学部を含め14 学部があり、ベルギー・フランス語圏での最大の大学です。
このフランス語圏のルーヴァンカトリック大学と2013 年からバイオシグナル総合研究センターとは研究交流の協定を締結しており、今回初めてUCL から3 名の修士課程在学中の学生が神戸大学BMS 専攻で研究を行うために4 月に訪日し、4 か月実験を行いました。3 名の学生はそれぞれ別の研究室で新しい研究に挑戦し、同時に日本の文化に触れ、ヨーロッパとの生活、習慣の違いを学びました。
今回、3 名の学生(Kevin Missault, Manuel Guthmann, Imen Jebri)が、4 か月間の研究成果を報告してくれるとともに、神戸大での留学生活の感想、UCL のBiomedical 専攻の研究内容、ベルギー・ルーヴァンの環境などを紹介してくれます. UCL との共同研究に興味のある教員の方や、将来の留学を考えている学生の方は是非ご参加ください。


日 時: 平成28年6月23日(木)16:00~17:30
場 所: バイオシグナル総合研究センター 5階 研修室
講 師: 菅野 新一郎 博士
  (東北大学加齢医学研究所)

演 題

使えるタンパク質複合体解析法(プロテオーム解析)
-使えるバイオインフォマティクス、免疫沈降法と古くて新しいアフィニティーカラム法、BioID法について-

要 旨

 ヒトの細胞内ではおおよそ1万5千種類ぐらいのタンパク質が機能していると言われています。さらに多くのタンパク質は翻訳後修飾をうけることで同じタンパク質でありながら何種類もの分子として存在し、タンパク質全体の分子種は遺伝子の数の何倍もあると考えられています。多くのタンパク質は翻訳後修飾とともに様々な複合体を形成して細胞の状況(発生過程や細胞周期あるいは紫外線や放射線に曝されるなど)に応じて生理的機能を果たしています。近年の質量分析機の発展は微量のサンプルからタンパク質を同定する事ができ、また、ある程度翻訳後修飾についても同定する事ができるようになりました。このことによりタンパク質研究は個々のタンパク質の研究から生理的機能単位である複合体の解析、シグナル経路を具体的な分子のイベントとして解析することなど相互作用タンパク質のネットワークの研究にシフトしつつあります。
演者はDNA修復機構を専門として多くのタンパク質複合体を解析してきました。また、バイオインフォマティクスの技術や実験のセンスをかわれて(複合体解析にはある程度訓練が必要です)まったく異なる分野の複合体解析も手がけてきました。今回の講演では、使えるバイオインフォマティクスと免疫沈降法、古くて新しいアフィニティーカラム法のコツについてなるべく具体的に研究に役立つお話をします。